天使な歌声

大学を出て数年間サラリーマンをしていた。宝石を扱う仕事だったためか、研修が独特だった。仕事終わりに最上階のフロアに集まり社交ダンスを踊らされた。それはそれで楽しく、新宿などに実践練習に行かされることもあった。

 

営業で地方に行くと、夜はダンスやカラオケに行った。娯楽が少ないせいか毎晩だった。もちろん接待なんだけど、楽な接待だったと今なら懐かしい。

 

カラオケに行くと、いい声だと褒められた。カラオケで惚れられることもあった。今では嘘のような話。

 

店内のBGMに合わせて口ずさんだら、まりちゃんに音痴と笑われた

 

もう若くないから声も出ないし、最近じゃ歌も歌ってない、反論の余地もない。

 

にしても、音痴って

 

最近聞かないな

 

YouTubeでボイトレを検索して、唇をブルブルさせたり、ハミングしたり

 

全然変わらない

 

お酒が入るとまりちゃんのテンションはおかしくなるらしい、お酒が残っててもそうらしい

 

飲みすぎて寝むいと、たしかに今日は遅刻していた。起きれなかったらしい

 

まりちゃんが気持ちよさそうに口ずさむ

 

ドキッとした

 

たったワンフレーズ

 

まさに天使のようだった

 

きれいな声、弾むようなリズム

 

美しいと思った

 

こんな子がまさに地下にいる

 

どんだけ引き出しがあるんだろう

 

そりゃ、魅了されるよ

 

まりちゃんは歌ってる姿も天使だった