教訓

まりちゃんがネイルを変えてるであろう日

 

あの嬉しそうな笑顔が見たくてつい会いにいってしまう

 

いつものように横にピタッと座ってくれる、それだけで心とける

 

でも、ふと考える

 

そういえばフリーで入ったあの日も初めましての僕に対してピタッと横に座り足を乗せてきた

 

そんなことされたことないからびっくりしたと同時に心が乱れた

 

でもね

 

それが営業のスタイルなんだ

 

もしかしたら、ボーイさんの指導かもしれない

 

みんなに対してやってんだよ

 

何を舞い上がってんだろう

 

服を脱ぎ、若いスタイルのいい、神乳と絶賛した裸体を惜しげもなく晒しサービスをする

 

日記には久しぶりに会えて嬉しかった、楽しかったと、見たお客さんはまた必ず行こうと思うような言葉を連ねる

 

全部営業なんだよ

 

だって仕事だから

 

服も脱がない、サービスも無い

 

そんな僕はほんといいお客さん

 

まりちゃんにとっても、店にとっても

 

どんなに通ったって、お金を使ったって

 

店のお客さん

 

まりちゃんが恋愛感情を持つことはもちろんない

 

プライベートで会うこともない

 

外での姿を見られることも

 

絶対に嫌

 

勘違いしちゃいけない

 

お客さん以外の感情を抱くことはないんだ

 

ところが男どもは、自分の盛り上がる感情と嬢の感情が同じだと勘違いする 

 

自分が会いたいと思う気持ちと同じように嬢は会いたがってると思い始める

 

自分の好きだと言う気持ちと嬢の自分への気持ちが同じはずだと勘違いし始める

 

些細な一言、仕草に、自分は特別なんだと確信し始める

 

バカな奴だ

 

バカな僕だ

 

全部仕事だよ

 

特別な感情なんて微塵もない

 

それが分かっていても会いたい

 

まりちゃんがネイルを見せるから目をつぶってという

 

目をあけてネイルを見る

 

宣言通りのキャラに前回とは全く違う雰囲気の可愛らしいネイル、ハートもある、雲?も

 

分かっていても会いたいんだ

 

それだけでいい

 

嬢にたいして、間違っても

 

自分のことをどう思ってるかなんて聞いちゃいけない

 

困るだろ

 

なんとも思ってないんだから

 

まりちゃんの本指名だと言う客が恋愛相談をしてきたと言う、その時点で失礼だ

 

嬢は客に対して恋愛感情はないのかと?

 

知りたい気持ちはわかる

 

でも、なんでも聞けばいいってもんじゃない

 

小学校じゃないんだから

 

自分で考えろ

 

恥ずかしげもない質問をする前に

 

そうして、そんな質問をする自分を誰が好きになるか、なるわけない事を知れ

 

推し活には忍耐が必要だ

 

相手がどう思うかじゃない

 

自分がどう思ってるかだ

 

地下の仕切られた空間でお客さんとして優しく接してくれる、恋人気分に浸してくれる

 

5分前のコールで現実に戻り

 

カーテン越しのバイバイで地上に帰る

 

それがまりちゃんの職場

 

地上に出たら全部忘れろ

 

それが嬢とのルールだよ

 

それが嬢を推すということ

 

自分を好きになって欲しいなら

 

同級生とでも付きあえ