日も暮れかけた帰り道、ポケットから割引きカードを取り出す。裏にはピンクの蛍光ペンでお礼が書いてある。
ツーブロ似合ってたよ
悪い気はしない、いや素直に嬉しい。
汚い中年になりたくないと、身だしなみには気を使ってきたつもりだし、お腹が出るのも嫌だから食事にも気を使い、トレーニングも欠かさない。
こんな形で日々の努力が報われるとは思わなかった。
何度もカードを見返してみる。
また来てね!の文字。
いい子だったなぁ
表情や仕草、会話を思い出そうとする。会話は思い出せるが、表情はぼんやりしている。
最近の記憶力なんてこんなもんだ。ご無沙汰してる知人の名前も出ないことがある。
心も体も満たされて家路についたが、不思議とまた行こうとは思わなかった。
非日常はたまにで十分だって、この時は思っていた。